腰痛の悪化について労災認定され、後遺障害14級が認定された事例

事故内容

 

 クライアント(40代男性)は、物流会社において、トラックの重い荷物を運搬する仕事をしていたところ、背中から腰に激痛がはしり、動けなくなってしまいました。

 

 

 

 会社の車で病院に運んでもらい、医師に診察してもらったところ、胸椎椎間板ヘルニアと診断され、会社を長期間休むことになりました。

 

 もともと、クライアントは、同じ会社で、5年間ほど、倉庫の荷物の棚卸しの仕事、トラックの荷物の運搬の仕事をしており、約20~30㎏の重量物を日常的に取り扱っていたことから、腰に負担がかかっており、以前から腰痛がありました。

 

 クライアントが以前から持っていた腰痛が、ある日の重量物の運搬作業をしていた時に、悪化したのです。

 

 クライアントは、労災保険を利用しておらず、健康保険を使用して、3割の自己負担の治療費を支払い、休業期間中は、傷病手当金を受給していました。

 

依頼の経緯

 

 腰痛の治療が長期間に及んだことから、クライアントは、労災保険を利用できないものかと考え、当事務所へ相談にこられました。

 

 労災と認定されれば、これまでクライアントが負担していた治療費が、労災保険から支給されます。

 

 また、傷病手当金は、給料の3分の2が支給されるのに対して、労災保険の休業補償給付は、給料の約8割が支給されるので、労災保険の方が手厚く、傷病手当金を受給していても、後から労災と認定されれば、労災保険から休業補償給付が支給されて、これまでに受給していた傷病手当金を返還すればよいのです。

 

 さらに、腰痛について後遺障害が認定されますと、障害補償給付として、後遺障害の等級に応じた一時金が支給されます。

 

 このように、クライアントにとって、労災保険を利用するメリットが大きいことから、当事務所において、腰痛の労災申請の手続を代理することにしました。

 

弁護活動

 

 とはいえ、腰痛で労災の認定を獲得するのは、なかなか困難です。

 

 ここで、腰痛の労災認定について解説します。

 

 腰痛の労災認定は、大きく、災害性の原因による腰痛と、災害性の原因によらない腰痛の2つに分かれます。

 

 災害性の原因による腰痛とは、腰に受けた外傷によって生じる腰痛や、突発的で急激な強い力が原因となって、筋肉等が損傷して生じた腰痛のことです。

 

 例えば、重量物の運搬作業をしていたときに転倒した場合や、重量物を2人で運搬していたときに、そのうちの1人が滑って肩から荷をはずした場合のように、突然の出来事により、急激な強い力が腰にかかったことによって生じた腰痛が、災害性の原因による腰痛です。

 

 

 災害性の原因による腰痛は、次の2つの要件を、どちらも満たす必要があります。

 

 ①腰の負傷または、その負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと、明らかに認められること

 

 ②腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を、著しく悪化させたと医学的に認められること

 

 災害性の原因による腰痛は、比較的、労災と認定されやすいです。

 

 他方、災害性の原因によらない腰痛とは、日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛をいい、①筋肉等の疲労を原因とした腰痛と、②骨の変化を原因とした腰痛に分かれます。

 

 ①筋肉等の疲労を原因とした腰痛とは、次のような業務に、比較的短期間(約3ヶ月以上)従事したことによる、筋肉等の疲労を原因として発症した腰痛のことをいいます。

 

 ・港湾荷役などのように、約20㎏以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務

 

 ・配電工などのように、毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務

 

 ・長距離トラック運転手などのように、長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務

 

 ・車両系建設用機械の作業などように、腰に著しく大きな振動を受ける業務を継続して行う業務

 

 ②骨の変化を原因とした腰痛とは、次のような重量物を取り扱う業務に、相当長時間(約10年以上)にわたり、継続して従事したことによる、骨の変化を原因として発症した腰痛をいいます。

 

 ・約30㎏以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務

 

 ・約20㎏以上の重量物を、労働時間の半分程度以上に及んで取り扱う業務

 

 災害性の原因によらない腰痛は、加齢による腰痛の発症との区別が困難であり、比較的、労災と認定されるのが難しいです。

 

 今回のクライアントのケースでも、事前に、労働基準監督署の担当者からは、労災の認定は難しいかもしれないと言われていました。

 

結果

 

 とはいえ、クライアントが腰痛の治療を受けていた病院のカルテと画像データを集め、クライアントにとって有利な事情を、労働基準監督署に主張した結果、幸いにも、労災と認定されました。

 

 その結果、クライアントが既に支払っていた治療費の合計金額が、労災保険から支給され、給料の約8割にあたる休業補償給付が支給されました。

 

 また、クライアントの腰痛について、後遺障害14級9号が認定され、障害補償給付として、合計約54万円の一時金が支給されました。

 

 難しいと言われていた腰痛の労災が認定され、労災保険の支給を受けられて、クライアントは満足されました。

 

 今回の事件のように、腰痛で労災と認定される場合がありますので、仕事中に腰痛を発症した場合には、労災の申請をすることをご検討ください。

 

 当事務所では、労災申請の代理手続をおこなっており、当事務所へご相談の場合は、電話でも、メールでも、LINEでも可能です。

 

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