【労災】フォークリフト事故で小指骨折・後遺障害13級|示談交渉で960万円を獲得した解決事例
フォークリフトを使用する現場では、わずかな不注意や安全管理の不備により重大な労災事故が発生することがあります。特に、積み込み作業中の労災事故では、手指の骨折や挟まれ事故が多く、後遺障害が残るケースも少なくありません。
しかし、指の骨折だからといって「大したことはない」と軽視され、適正な賠償を受けられていないケースも多く見受けられます。また、保険会社からの提示額が必ずしも適正とは限らず、本来受け取れるはずの補償を逃してしまうこともあります。
今回は、フォークリフトの労災事故により、小指を骨折し、後遺障害13級が認定された事案について、弁護士が交渉した結果、最終的に960万円で解決した事例をご紹介します。同様の労災事故でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

労災事故の発生
今回紹介する労災事故は、依頼者が取引先の倉庫において、トラックに荷物の積み込み作業をしていた時に発生しました。
依頼者は、トラックの中にある製品の間に養生をしていたところ、取引先の従業員が、依頼者の合図を待たずに、フォークリフトで製品の積み込みをした結果、依頼者の右の小指がフォークリフトに挟まれてしまいました。
この労災事故は、フォークリフトの運転手が、依頼者からの合図を待たずに、近くで作業をしている依頼者を確認せず、声掛けをせずに、フォークリフトを操作したことが原因で発生しました。

労災の後遺障害13級の4の認定
この労災事故によって、依頼者は、右第5指挫滅創、右小指末節骨骨折のけがを負いました。依頼者は、労災申請をして、労災と認定されましたので、治療費については、労災保険から全額支給されました。また、依頼者が治療のために会社を休業している期間、労災保険の休業補償給付が支給され、給料の約8割が、労災保険から支給されました。
依頼者は、治療を継続し、入院4日間、治療期間339日間を経て、症状固定となりました。症状固定とは、これ以上治療を継続しても、症状がよくならなくなった時点をいい、症状固定時において、残存している悪しき症状のことを、後遺障害といいます。
依頼者は、治療をしてきたものの、右小指を曲げにくい、指に痛みやしびれが残るという症状が残存してしまいました。そこで、労災保険の障害補償給付の申請をしました。依頼者の右小指の近位指節間関節の可動域が、左小指と比較して、1/2以下に制限されていました。その結果、労災保険の後遺障害等級の13級の4「1手の小指の用を廃したもの」に該当しました。
指の後遺障害は、見た目では軽く見られがちですが、指の関節の可動域制限が認められれば、後遺障害と認定されます。後遺障害と認定されれば、労災保険から、障害補償給付を受給できます。
後遺障害13級の4の場合、給付基礎日額(労災事故前3ヶ月間の賃金の平均額)の101日分の障害補償一時金、算定基礎日額(労災事故前1年間の賞与を365日で割った金額)の101日分の障害特別一時金、14万円の障害特別支給金が支給されます。
依頼者は、障害補償一時金として1,398,547円、傷害特別一時金として36,057円、障害特別支給金として14万円を受給しました。

損害賠償請求
労災保険からは、精神的苦痛に対する慰謝料は支給されません。
また、後遺障害による収入の減少に対応する、労災保険の障害補償給付では、労働者の将来の収入の減少という損害が、全てまかなわれるわけではありません。
このように、労災保険からは支給されない慰謝料や、労災保険からの補償では足りない、労働者の将来の収入の減少の損害について、損害賠償請求ができないかを検討します。
不法行為責任と使用者責任
今回の事例では、取引先のフォークリフトの運転手のミスによって、依頼者は負傷したので、フォークリフトの運転手に対して、損害賠償請求ができないかを検討します。フォークリフトの運転手に対して、損害賠償請求を検討する時には、不法行為責任を追及します。不法行為(ふほうこうい)とは、「わざと(故意)」または「うっかり(過失)」で他人の権利や利益を侵害し、損害を与えた場合に、その責任を負うことをいいます。
フォークリフトの運転手は、依頼者からの合図を待たずに、近くで作業をしている依頼者を確認せず、声掛けをせずに、フォークリフトを操作したという落ち度がありますので、依頼者に対して、不法行為責任を負います。
次に、フォークリフトの運転手を雇用している取引先の会社に対して、損害賠償請求ができないかを検討します。労災事故の損害賠償請求では、けがの程度によっては、損害賠償額が多くなり、個人では支払能力がないというリスクがあります。そこで、個人だけではなく、支払能力がありそうな会社に対しても、損害賠償請求ができないかを検討するのです。
労働者を雇用している会社は、雇用している労働者が不法行為をした場合、被害者に発生した損害を賠償する責任を負います。これを使用者責任といいます。使用者責任は、事業で利益を得ている会社は、そのリスクも負うべきという報償責任の原理と、事業で利益を得る以上、従業員が危険な行為をして損害を出したリスクも会社が負うべきという危険責任の原理を根拠に認められています。
今回の労災事故では、フォークリフトの運転手は、事業の執行について、依頼者に対して不法行為をしたので、依頼者に対して、使用者責任を負います。
労災の後遺障害13級の損害賠償額
さてここから、今回の労災事故における依頼者の損害を計算してみます。
①休業損害
労災事故によって、働けなくなり、会社を休業することによって、給料の支給がなくなる損害を休業損害といいます。
休業損害は、収入日額に休業日数をかけて計算します。収入日額は、労災事故前3ヶ月間の給料総額を期間の総日数で割って計算するので、労災保険の給付基礎日額の計算とほぼ同じです。
今回の労災事故の場合、依頼者の収入日額は、13,846円で、休業日数は110日でしたので、休業損害は、13,846×110=1,523,060円となります。
労災保険から支給された休業補償給付は、給料の約80%が支給されますが、80%のうちの20%は、特別支給金でして、これは、損害賠償請求にあたり、控除されません。今回、控除される休業補償給付は、給料の約60%であり、その金額は、888,956円でした。
最終的な休業損害は、1,523,060-888,956=634,104円となりました。
②逸失利益
逸失利益とは、労災事故がなければ将来得られたであろう収入のことです。逸失利益は、次の計算式で計算します。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入とは、労災事故の前年の年収のことです。
労働能力喪失率は、後遺障害によって、労働者の労働能力がどれくらいの割合で喪失したかを算出するものです。後遺障害13級の場合、労働能力喪失率は、9%です。
労働能力喪失期間は、後遺障害による労働能力が喪失された期間のことで、原則として、67歳から症状固定時の年齢を差し引いて計算します。今回の労災事故の場合、労働能力喪失期間は、31年間でした。
ライプニッツ係数とは、労災事故などの損害賠償金に生じる中間利息を控除するための係数です。逸失利益の損害賠償請求では、将来にわたる損害賠償金を一度に受け取ることなります。その損害賠償金を運用すると利息が生じるので、この利息分を控除するために、ライプニッツ係数を使用します。労働能力喪失期間31年間に対応するライプニッツ係数は、20.0004です。
今回の労災事故で逸失利益を計算すると次のとおりとなります。
4,727,250×0.09×20.0004=8,509,220円
労災保険から支給された障害補償給付のうち、障害補償一時金は、逸失利益から控除されますが、障害特別一時金及び障害特別支給金は逸失利益から控除されません。
今回の労災事故の障害補償一時金は、1,398,547円でしたので、最終的な逸失利益は、次のとおりとなります。
8,509,220-1,398,547=7,110,673円
③入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、労災事故の怪我で入院・通院を余儀なくされた精神的・肉体的苦痛に対して支払われる慰謝料です。入通院慰謝料については、入院の月数と通院の月数から計算します。
今回の労災事故では、入院4日間、通院約10ヶ月でしたので、入通院慰謝料は、1,520,667円となります。
④後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、労災事故のケガ治療後に残った後遺障害について、その身体的・精神的苦痛に対して支払われる慰謝料のことです。後遺障害慰謝料については、後遺障害の等級に応じて金額が決まります。後遺障害13級の場合、後遺障害慰謝料は、180万円が相場です。
他方、取引先の会社には、保険会社がついていたため、保険会社から、損害賠償額の提示がありました。保険会社から提示された金額は次のとおりでした。
①休業損害 997,691円
②逸失利益 4,115,804円
③入通院慰謝料 1,005,100円
④後遺障害慰謝料 700,000円

示談交渉
保険会社と示談交渉をして、労災保険から支給された以外に、保険会社から支払われた既払金や過失相殺を考慮しました。
過失相殺とは、労災事故において、被災労働者にも落ち度があった場合、その落ち度の程度によって、損害賠償額を減額することです。当初、依頼者には、落ち度がないと主張していましたが、保険会社からは、依頼者が何度もこの作業をしている中で起きた労災事故なので、依頼者にも落ち度があったという主張を譲りませんでした。
今回の労災事故では、依頼者は、労災事故後であっても、収入の減少がなかったため、裁判で、逸失利益が争われた場合、依頼者に不利になるリスクがありました。保険会社は、依頼者の逸失利益の主張を争っていなかったので、過失相殺を少しだけ譲った方が、依頼者の受け取れる損害賠償額が多くなると判断して、過失相殺を、依頼者5対相手方95とすることで示談をしました。
当初の保険会社からの損害賠償額は422万円でしたが、最終的には、960万円で示談が成立しました。
13級の後遺障害の認定をもとに、逸失利益と慰謝料が裁判基準で認められたことから、依頼者が受け取れる損害賠償額が多くなりました。
受け取れる損害賠償額が大幅に増額され、裁判を経ずに、迅速に解決できたことから、依頼者に、ご納得いただき、ご満足いただけました。
このように、労災事故において、相手方に保険会社がついた場合、保険会社から提示される損害賠償額を、そのまま鵜呑みにせず、弁護士に示談交渉をしてもらうことで、損害賠償額を増額できる可能性があります。
そのため、適切な賠償を受け取るためにも、後遺障害の認定や損害賠償請求について、弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所では、給付を受け取る権利がある方に、一人でも多く、給付を受け取っていただき、みなさまの未来への不安解消と、前を向くきっかけづくりのお手伝いをさせていただきたいと考えております。
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この記事を書いた弁護士
徳田隆裕(とくだ たかひろ)
弁護士法人金沢合同法律事務所 弁護士
2010年弁護士登録。労働者側での労働事件を専門として、解雇、残業、労災といった労働問題で困っている労働者を笑顔にするために、日々弁護活動を行っています。「労働弁護士徳田タカヒロ」というYouTubeチャンネルで、労働問題についての情報発信をしています。
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