脚立から転落して骨折した労災事故で、後遺障害12級の12に認定された事例【弁護士が解説】

労災事故の概要と依頼者の状況

 脚立やはしごから墜落、転落する労災事故に巻き込まれた場合、骨折等の重篤な結果が発生したり、負傷箇所によっては死亡に至ることもありえます。

 墜落や転落の労災事故の原因として、脚立やはしごからの墜落や転落の割当は多いのです。

 今回は、脚立から転落して肋骨を骨折した依頼者が、労災保険の障害補償給付の申請をした結果、後遺障害12級の12と認定された事例を紹介します。

 

 

 依頼者は、葬儀場の庭園の木の枝を、脚立を利用して伐採していたところ、木の枝が切れて、木が落ちる時、たくさんあった細い枝とつるに服が巻き込まれ、木の落下と共に、脚立から転落し、背中と後頭部を地面に打ち付けました。

 依頼者は、病院へ搬送されたところ、頭部には異常はなかったものの、肋骨と腰椎が骨折していました。

 依頼者は、腰を固定するベルトを装着し、痛み止めを処方してもらい、保存療法を行っていたところ、会社から復帰してほしいと言われて、職場復帰しました。

 職場復帰したものの、痛みが継続しており、リハビリを定期的に行い、労災事故から約1年経過後に、主治医から症状固定と診断されました。

 症状固定とは、ケガや病気の治療を続けても、これ以上症状が改善しないと医学的に判断される状態のことです。

 労災事故の場合、症状固定までは、労災保険から、治療費が全額支給される、療養補償給付、及び、会社を休業している期間、給料の約80%が補償される、休業補償給付が支給されますが、症状固定した後は、これらの支給が打ち切りとなります。

 症状固定後に、悪しき症状が残っている場合、労災保険の障害補償給付の申請をして、後遺障害と認定されれば、労災保険から、後遺障害の等級に応じた補償を受けることができます。

後遺障害認定のための障害補償給付の申請

 依頼者には、腰から脇腹にかけて、痛みが残っていました。

 依頼者は、10分以上座ったり、アップダウンのある道を歩くと、腰や背中に痛みが生じていました。

 また、前かがみになったり、体をひねったり、重い物を持ったり、咳をした時に、脇腹あたりに激痛が走りました。

 このように、痛みの症状が残存していることから、労災保険の障害補償給付の申請をするために、依頼者は、当事務所へご依頼されました。

 依頼者が通院していた病院から、カルテを取り寄せて、カルテの内容を検討したところ、労災保険の後遺障害等級の12級の12に該当する可能性があると考えられました。

 

 

労災保険の後遺障害12級の12とは?

 労災事故による骨折後に痛みの症状が残存する場合、労災保険の後遺障害としては、局部の神経系統の障害に分類されます。

 痛みといった神経症状が残存した場合の後遺障害には、12級の12の「局部にがん固な神経症状を残すもの」、14級の9の「局部に神経症状を残すもの」があります。

 そして、労災保険の後遺障害の認定基準においては、12級の12を「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」としており、14級の9を「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」としています。

 具体的には、労災事故により身体の異常が生じ、医学的見地から、その異常により障害が発生していることが、種々の検査結果をもとに判断できる場合、12級の12に該当します。

 また、現在存在する症状が、労災事故により身体に生じた異常によって発生していると説明可能な場合、14級の9に該当します。

 依頼者の場合、肋骨の多発骨折後、骨折した骨が本来くっつくはずの期間を過ぎてもくっつかず(癒合せず)、骨折部が関節のようにグラグラ動く状態となる偽関節となった影響で、胸部に痛みが認められるとして、12級の12と認定されました。

 このように、痛みについて、カルテ等の医学的根拠をもとに明らかにできる場合、労災保険の後遺障害12級の12と認定される可能性があります。

 

 

4 弁護士に労災の後遺障害の申請を依頼するメリット

 労災の後遺障害では、適正な等級認定を受けることが重要になりますところ、弁護士に、後遺障害の等級認定のサポートを依頼することで、適正な後遺障害の等級認定を受けられる可能性が高くなります。

 労災の後遺障害の等級認定では、主治医の後遺障害の診断書が重要になります。

 もっとも、医師は、治療については、専門家ではありますが、後遺障害について、専門的な知識を有しているとは限りません。

 主治医が、後遺障害の専門的な知識を有しておらず、後遺障害の診断書に記載漏れがあった場合、適正な後遺障害の等級認定が受けられないリスクがあります。

 そこで、後遺障害の専門的な知識を有する弁護士が、被害者と共に、主治医と面談をして、後遺障害の診断書に漏れなく、必要な事項を記載してもらうように、依頼をすることで、適正な後遺障害の等級認定を受けられる可能性が高くなります。

 また、労災の後遺障害では、関節の可動域制限が見過ごされる可能性があります。

 例えば、肩関節の可動域が、健康な肩の可動域と比較して、4分の3以下に制限されていれば、12級の後遺障害に該当し、2分の1以下に制限されていれば、10級の後遺障害に該当します。

 主治医が可動域制限を見過ごしてしまった場合、12級や10級の後遺障害の等級認定を受けられないリスクがあります。

 弁護士が、主治医に対して、可動域制限の測定を依頼することで、可動域制限の見過ごしを回避することができます。

 さらに、被害者が、自身の症状である痛みやしびれ、日常生活で不自由をしていること、労働能力が低下したことなどを、労働基準監督署に対して、正確に伝える必要があります。

 弁護士は、被害者から、症状や日常生活での不自由さ、労働能力の低下について、必要な聞き取りをし、自己申告書という資料の作成のサポートをして、労働基準監督署に対して、被害者の現状を正確に伝えます。

 このように、後遺障害の等級認定のサポートを弁護士に依頼することで、適正な後遺障害の等級認定を受けられる可能性が高くなります。

 当事務所では、後遺障害の等級認定のサポートに力をいれておりますので、労災の後遺障害でお悩みの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。

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