新型コロナ後遺症と労災

Q:仕事中に新型コロナウイルスに感染したようで、一度は症状がおさまったのですが、その後も再び症状が生じて持続しています。このような、新型コロナウイルスに感染した後の症状について、労災保険の給付の対象になるのでしょうか。

 

 

A:業務により、新型コロナウイルスに感染した後の症状についても、労災保険の給付の対象になることがあります。

 

 

1 仕事中に新型コロナウイルスに感染したら労災保険を利用する

 

 

 医師や看護師、介護従事者が新型コロナウイルスに感染したり、複数の新型コロナウイルス感染者が確認された職場で働いていたり、顧客等との近接や接触の機会が多い職場で働いていて、新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険の給付の対象になります。

 

 

 仕事中に新型コロナウイルスに感染して、労災保険の給付の対象になれば、新型コロナウイルス感染症の治療費が、労災保険から全額支給され、治療費は無料になります。

 

 

また、新型コロナウイルス感染症の症状がおさまるまで、会社を休むことになっても、休業補償給付として、給料の約8割分が、労災保険から支給されます。

 

 

 その結果、仕事中に新型コロナウイルスに感染して、治療のために、会社を休んでも、安心して、治療に専念することができます。

 

 

2 新型コロナウイルス感染症による罹患後症状と労災

 

 

 新型コロナウイルス感染症については、感染性が消失した後であっても、呼吸器や循環器、神経、精神等に係る症状がみられる場合があります。

 

 

 これを、新型コロナウイルス感染症による罹患後症状といいます。

 

 

 新型コロナウイルス感染症による罹患後症状は、感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がなく、急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに、または再び生じて持続する症状全般をいいます。

 

 

 代表的な新型コロナウイルス感染症による罹患後症状としては、次のものがあげられます。

 

 

 ①全身症状

 ・倦怠感

 ・関節痛

 ・筋肉痛

 

 

 ②呼吸器症状

 ・咳

 ・喀痰

 ・息切れ

 ・胸痛

 

 

 ③精神・神経症状

 ・記憶障害

 ・集中力低下

 ・不眠

 ・頭痛

 ・抑うつ

 

 

 ④その他の症状

 ・嗅覚障害

 ・味覚障害

 ・動悸

 ・下痢

 ・腹痛

 

 

 これらの新型コロナウイルス感染症による罹患後症状については、令和4年5月12日付の基補発0512第1号の「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」と題する通達によって、業務により新型コロナウイルスに感染した後の症状であり、治療が必要と認められる場合には、労災保険の給付の対象になることが明らかになりました。

 

 

 そのため、仕事中に新型コロナウイルス感染症に罹患し、その後も症状が持続するような場合、労災保険を利用することで、治療費が全額、労災保険から支給され、会社を休んでも、給料の約8割の補償が得られ、安心して、治療に専念することができますので、労災保険を利用することを検討してみてください。

 

 

 なお、新型コロナウイルス感染症による罹患後症状については、コロナ後遺症と表現されることが多いのですが、労災保険の障害補償給付における後遺障害の状態ではなく、治療が必要な状態を意味することが多いです。