製造業における労働災害の対処法【弁護士が解説】

1 製造業における労災事故の実態

 

 

 製造業に従事している労働者が、労災事故にまきこまれた場合、どうすればいいのでしょうか。

 

 結論から先にいいますと、製造業に従事している時に労災事故にまきこまれた場合、労災保険を利用し、その後、会社に対する損害賠償請求を検討します。

 

 今回の記事では、①製造業における労災事故の実態、②労災申請、③損害賠償請求の3つの順番で解説します。

 

 まずは、製造業における労災事故の実態について解説します。

 

 厚生労働省が公表している、「令和5年労働災害発生状況」の統計資料によりますと、労災事故による休業4日以上の死傷者数が、全産業の中で最も多かったのが、製造業なのです。

 

 また、厚生労働省が公表している、「令和5年労働災害発生状況の分析等」の統計資料によりますと、製造業における労災事故の類型で、1位は、はさまれ・巻き込まれ、2位は、転倒、3位は、動作の反動・無理な動作、4位は、墜落・転倒、5位は、切れ・こすれとなっています。

 

 1位のはさまれ・巻き込まれの労災事故は、工場に設置されている製造機械に手や衣類が巻き込まれてしまい、けがを負うといったものです。

 

 機械に事故防止のための安全装置が設置されていないことや、機械の操作ミスが原因で、はさまれ・巻き込まれの労災事故が起こることがあります。

 

 2位の転倒の労災事故は、工場の床が滑りやすくなっており、床に置いてあった荷物にぶつけてしまって、転倒して、けがを負うといったものです。

 

 工場内の整理整頓がなされていないことや、転倒しやすい箇所での注意喚起が不十分であることが原因で、転倒の労災事故が起こることがあります。

 

 3位の動作の反動・無理な動作の労災事故は、重い原材料を持ち上げる作業を繰り返していたところ、腰に過度の負担がかかり、腰痛が発症したといったものです。

 

 重量物の運搬について、負担を軽くする方法が実施されていないことや、腰痛予防の教育がされていなかったことが原因で、動作の反動・無理な動作の労災事故が起こることがあります。

 

 4位の墜落・転倒の労災事故は、高いところの荷物を取る際に、脚立を使用していて、その脚立から転倒して重症を負ったといったものです。

 

 脚立の安全な作業方法の定めがされていないことや、墜落防止の囲いが設置されていなかったことが原因で、墜落・転倒の労災事故が起こることがあります。

 

 5位の切れ・こすれの労災事故は、金属加工機械で、鋼板を削っていたこところ、削った鋼板の破片が跳ねて、作業者の体にあたり、負傷したといったものです。

 

 作業手順を定めていないことや、機械に安全カバーが設置されていないことが原因で、切れ・こすれの労災事故が起こることがあります。

 

 このように、製造業においては、機械を使った作業があったり、高所での作業があったりと、労災事故が発生しやすく、また、労災事故によって、重症を負ったり、最悪の場合、死亡するリスクがあるのです。

 

2 労災申請をする

 

 

 不幸にも、製造業に従事していた時に、労災事故にまきこまれた場合には、必ず、労災申請をしてください。

 

 製造業における労災事故が、労災と認定されれば、労災保険から、治療費が全額支給されます。

 

 治療のために、会社を休業している期間、給料の約8割が支給されます。

 

 そのため、安心して治療に専念できます。

 

 製造業における労災事故によるケガの治療を続けていたものの、これ以上、現在の医学では、症状が改善されない時がきます。

 

 これを、症状固定といいます。

 

 症状固定時点で、残ってしまった悪しき症状で、労働能力の喪失を伴うものを、後遺障害といいます。

 

 労災保険では、1級から7級までの後遺障害の認定がされた場合には、年金が支給され、8級から14級までの後遺障害の認定がされた場合には、一時金が支給されます。

 

 後遺障害が残った場合、労災保険から、年金または一時金が支給されることで、後遺障害によって、労働能力が失われたことによる収入の減少に対する補償がなされ、今後の生活が安定します。

 

 他方、製造業における労災事故によって、不幸にも、死に至った場合、ご遺族は、労災保険の遺族補償給付を受給できます。

 

 遺族補償給付を受給できれば、2ヶ月に1回、労災保険から、年金が支給されますので、残されたご遺族の生活の安定につながります。

 

 このように、製造業に従事していた時に、労災事故にまきこまれた場合、今後の生活の安定のために、必ず、労災申請をしてください。

 

 労災申請をするには、①会社に手続を代行してもらうか、②ご自身で労働基準監督署へ行って手続をする、③弁護士に労災申請を依頼する、の3つの方法があります。

 

 労災の申請書に、労災事故の発生状況を正確に記載する必要があること、適切な後遺障害の認定を受ける必要があることから、労災申請の手続を、弁護士に依頼することをおすすめします。

 

3 会社に対する損害賠償請求を検討する

 

 

 労災保険からは、労災事故によって被った精神的苦痛に対する慰謝料は、支給されません。

 

 また、後遺障害による収入の減少に対応する、労災保険の障害補償給付と、労働者の死亡による収入の喪失に対応する、労災保険の遺族補償給付では、労働者の将来の収入の減少・喪失という損害が、全てまかなわれるわけではありません。

 

 このように、労災保険からは支給されない慰謝料や、労災保険からの補償では足りない、労働者の将来の収入の減少・喪失の損害について、会社に対して、損害賠償請求ができないかを検討します。

 

 すなわち、製造業における労災事故について、会社が安全対策を怠っていた場合、会社に対して、損害賠償請求ができる可能性があります。

 

 労災事故で、会社に対して、損害賠償請求をするためには、会社に、安全配慮義務違反が認められなければなりません。

 

 安全配慮義務とは、労働者の生命・健康を危険から保護するように、会社が配慮する義務をいいます。

 

 では、どのような場合に、会社に安全配慮義務違反が認められるのでしょうか。

 

 例えば、工場の機械の操作をしていた時に、機械に指が挟まれたという労災事故が発生したとしましょう。

 

 労災事故が発生した当時、機械に指が挟まれてしまったら直ちに解放できるような安全装置がなかったり、機械に指が挟まれた時の解放方法の教育が十分になされていなかった場合には、会社は、機械よる労災事故を防止するための安全対策を怠ったとして、安全配慮義務違反が認められる可能性があります。

 

 このように、会社が労災事故を防止するための安全対策を怠っていた場合、労働者は、会社に対して、労災保険からの補償では足りない損害について、損害賠償請求をすることができるのです。

 

 ここまで、製造業における労災事故について解説してまいりました。

 

 製造業は、全国でも労災発生件数が最も多いものとなっております。

 

 もし、労災事故に巻き込まれた場合には、労災申請をしていただきたいのですが、わからない場合は弁護士にご相談ください。

 

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 労災事故にまきこまれて、これからどうすればいいのかお悩みの場合には、ぜひ、当事務所へご相談ください。