労災事故で家族が死亡したら、遺族が受け取れる労災保険からの給付はいくらになる?

Q.労働基準監督署で労災と認定された場合、いくらの補償を労災保険から受けることができるのでしょうか。

 

例として、年収が500万円(給付基礎日額が1万4000円、年間ボーナスが73万円と仮定)の夫が労災事故で死亡し、遺族が妻と子供2人(11歳と16歳)のケースで考えてみましょう。

 

労災保険からの補償

 

このケースでは、労災補償を受給できるのは妻であり、労災保険から、①遺族補償給付、②葬祭料、③労災就学等援護費が支給されます。

 

①遺族補償給付

今回のケースの場合、遺族補償給付として、遺族特別支給金、遺族補償年金、遺族特別年金が支給されます。

 

遺族補償給付の支給要件は次のとおりです。

 

①被災労働者が死亡した当時、その収入によって生計を維持していたこと

 

この生計維持関係は、遺族が被災労働者と現実に同居していた場合、または、同居していなくても、その遺族と被災労働者の間で生活費や療養費などの経済的な援助が行われていたり、お互いに定期的に音信や訪問が行われている場合に認められます。

 

②被災労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であること

 

③年齢要件を満たしていること

 

まず、遺族特別支給金として、はじめに一時金300万円が支給されます。

 

次に、遺族補償年金と遺族特別年金は、遺族の数に応じて、支給金額が変わります。

 

遺族が3人の場合、遺族補償年金は、給付基礎日額の223日分となりますので、1万4000円×223日分=312万2000円(年額)となります。

 

給付基礎日額とは、労災事故が発生した日の直前3ヶ月間の賃金の総支給額を日割り計算したものです。

 

遺族3人の場合、遺族特別年金は、算定基礎日額の223日分となり、算定基礎日額とは、1年間の賞与を365日で割って得られたものですので、算定基礎日額は、73万円÷365日=2000円となり、2000円×223日分=44万6000円(年額)となります。

 

遺族の数が、1人の場合、遺族補償年金は、給付基礎日額の153日分、遺族特別年金は、算定基礎日額の153日分、2人の場合、遺族特別年金は、給付基礎日額の201日分、遺族特別年金は、算定基礎日額の201日分が支給されます。

 

遺族補償年金と遺族特別年金は、毎年偶数月の中旬ころに2ヶ月分がまとめて支給されます。

 

なお、死亡した被災労働者の遺族の中に、生計維持関係のある遺族、つまり、遺族補償年金を受取る権利のある遺族がいない場合には、その他の遺族に対して、遺族補償一時金及び遺族特別一時金が支給されます。

 

遺族補償一時金については、給付基礎日額1000日分が、遺族特別一時金については、算定基礎日額1000日分が、それぞれ支給されます。

 

遺族補償給付を申請するには、労働基準監督署に対して、労災保険の様式第12号の遺族補償年金支給請求書、遺族特別支給金・遺族特別年金支給申請書を提出します。

 

②葬祭料

②葬祭料の支給額は、「被災労働者の給付基礎日額の60日分」と「給付基礎日額30日分に31万5000円を加えた額」を比較して、高い方となりますので、このケースでは、1万4000円×60日分=84万円となります。

 

なお、葬祭料については、すでに葬儀を執り行っている場合に請求できます。

 

葬祭料を申請するには、労働基準監督署に対して、労災保険の様式第16号の葬祭料請求書を提出します。

 

③労災就学等援護費

③労災就学等援護費とは、被災労働者の子供が、被災労働者の労災事故が原因で、学業を放棄したり、進学を断念せざるを得ないような状況になる場合が少なくないことから、そのような子供に対する援護をするために支給されるものです。

 

このケースでは、11歳の小学生の子供には毎月1万2000円、16歳の高校生の子供には毎月1万6000円が支給されます。

 

なお、給付基礎日額が1万6000円を超える場合には、労災就学等援護費は支給されません。

 

労災就学等援護費を申請するには、労働基準監督署に対して、労災保険の様式第1号の労災就学等援護費支給申請書を提出します。

 

 

このように、労災事故で家族が死亡した場合、遺族は、労災申請をして、労災と認定されることで、労災保険から補償を受けることができ、遺族の今後の生活が安定します。

 

労災事故で家族が死亡した場合、必ず、労災申請をするようにしてください。

会社に対する損害賠償請求を検討する

 

 

(1)労災保険からの補償では足りない?

 

 労災事故による死亡が労災と認定された後に、会社に対して、損害賠償請求をすることを検討します。

 

 特に、労災事故の後に、会社が遺族に対して、誠意ある対応をしなかった場合、遺族が、会社に対して、損害賠償請求をすることが多いです。

 

 また、労災保険の遺族補償給付だけでは、死亡した労働者が本来もらえたはずの収入(逸失利益といいます)の全てをまかなうことができません。

 

 さらに、労災保険には、慰謝料に相当する支給はありません。

 

 そのため、労災保険からの支給では不足する逸失利益や、労災保険から支給されない慰謝料について、会社に対して、損害賠償請求をすることを検討します。

 

(2)労災事故による死亡の逸失利益

 

 例えば、今回のケースで、逸失利益と慰謝料の損害賠償額を計算してみます。

 

 死亡による逸失利益は、年収×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数、という算定方式で計算されます。

 

 生活費控除率は、死亡した労働者の生活費がかからなくなるために、その生活費を控除するための割合のことです。

 

 すなわち、労災事故によって死亡すると、働けなくなるので、収入は得られなくなりますが、その代わり生活費がかからなくなるため、逸失利益の計算の際には、本来かかるはずの生活費が、かからなくなる分を差し引くことになります。

 

 一家の支柱が死亡して、被扶養者が2名以上の場合の生活費控除率は、30%です。

 

 就労可能年数は、通常、67歳までとされています。

 

 ライプニッツ係数は、労災事故の被害者が将来受け取るはずの収入を、現時点の価値に換算するときに使われるものです。

 

 すなわち、逸失利益では、将来にわたる損害賠償金を一度に受け取ることになるので、利息を差し引くことになるのです。

 

 ようするに、一度に受け取ったお金を運用すれば、利息が増えため、現在請求できる金額は、将来もらえるはずの金額からそれまでの利息分を控除した金額になるのです。

 

 今回のケースでは、ライプニッツ係数は、18.7641となります。

 

 今回のケースで、逸失利益を計算すると、500万×(1-0.3)×18.7641=6567万4350円となります。

 

 このように計算した逸失利益から、これまでに受給した遺族補償年金が控除されます。

 

 なお、遺族特別年金と遺族特別支給金は、逸失利益から控除されません。

 

 また、将来支給される遺族補償年金も、逸失利益から控除されません。

 

(3)労災事故による死亡の慰謝料

 

 労災事故で、一家の支柱が死亡した場合の慰謝料については、2800万円が相場となっています。

 

 なお、母親や配偶者が死亡した場合の慰謝料については、2500万円、独身の男女の場合の慰謝料については、2000万円~2500万円が相場となっています。

 

 以上のとおり、労災保険では、死亡した労働者の全ての損害を補償することはできず、労災保険ではまかないきれない分を、会社に対して、損害賠償請求できないかを検討する必要があるのです。

 

(4)労災における安全配慮義務違反とは?

 

 次に、労災事故について、会社に対して、損害賠償請求をするためには、会社に、安全配慮義務違反が認められる必要があります。

 

 安全配慮義務とは、労働者の生命・健康を危険から保護するように、会社が配慮する義務をいいます。

 

 労災事故では、会社に、労働安全衛生法令やこれに関する通達に違反している場合に、安全配慮義務違反が認められます。

 

 ですので、労災事故の内容から、会社に労働安全衛生法令の違反がなかったかを検討することが重要になります。

 

 また、労災事故の発生に、労働者の落ち度も関与していた場合、過失相殺をされてしまい、認められる損害賠償額から、いくらか控除されることがあります。

 

 この過失相殺で、何割くらい、損害賠償額が減額されるのかについては、労働者の落ち度の程度によって変わってきますので、ケースバイケースで判断していくことになります。

 

 

死亡事故の各種手続きや損害賠償を弁護士に依頼するべき理由

死亡事故をはじめ、労働災害の補償やその手続きは複雑で、一般の方が理解しづらいとお感じになる部分も少なくありません。

 

また、ご自身で会社と交渉することは大きなストレスとなりますし、どんな責任をどの程度追及できるどうかについても、判断は容易ではありません。

 

弁護士にご依頼いただくことで、会社側に責任があるのかどうかをより正確に判断し、事業主と対等に交渉することが可能です。

 

また、「弁護士に依頼するかについては未定」という方も、お早めにご相談いただくことで、個別具体的な事情を鑑みつつアドバイスをさせていただき、ご不安の解消や、今後の方針を決めるためにお役に立つことができるかと思います。

 

当事務所の労災による死亡事故の解決事例

長時間労働による過労死が労災と認定され、会社との間で損害賠償請求の示談が成立した事例はこちら>>>

 

 

当事務所の強み

一口に弁護士と言っても、注力している領域は様々であり、それによって研鑽・経験を積んでいる内容も異なります。

 

当事務所は、死亡事故をはじめとして、70年以上にわたって労働者側の労働災害事件や労働問題に取り組んでおり、労災事故に巻き込まれた労働者の権利擁護の実現を目指しています。

 

 

また、当事務所の弁護士は、日本労働弁護団過労死弁護団連絡会議に所属しており、労災事件や労働事件に関する専門性を磨いております。

 

更に、当事務所は、ベテランから若手まで、個性豊かな男女7人の弁護士が所属している、石川県内では最大規模の法律事務所です。

 

複数の弁護士がチームを組み、よりよい解決を導き出せるように協働するとともに、労災申請から損害賠償請求まで、ワンストップでサポートをご提供できる連携体制づくりに努めております。

 

 

当事務所にご依頼いただいた場合のサービス

まだ労災申請をしていない段階でご依頼いただいた場合には、当事務所の弁護士が被災者の代理人として、必要な調査や証拠を集めた上で、労災申請手続を行います。

 

すでに労災の結果がでていても、その結果にご納得がいかない場合には、労働基準監督署の決定に対して、異議申立手続である審査請求の手続を行います。

 

労災の認定がされて、労災保険から一定の補償が受けられていても、慰謝料などは、労災保険からは支給されませんので、被災者が被った損害のうち、労災保険では補償されない部分について、会社に対して、損害賠償請求をします。

 

会社に対する損害賠償請求では、まずは、会社と交渉して、示談ができるかを検討します。

 

会社と交渉しても、示談ができない場合には、会社を相手に裁判を起こして、被災者の損害が賠償されるように、裁判手続をすすめていきます。

 

当事務所の弁護士は、被災者の権利を擁護するために、全力を尽くします。

 

 

弁護士費用

当事務所では、労働災害に遭われた方の経済的なご不安・ご負担を少しでも軽減するために、初回のご相談については、料金を頂いておりません。

 

(2回目以降のご相談については、30分につき税別5,000円を頂戴しております。)

 

1.労災申請

1-1.事故型労災

着手金

無料

 

報酬金

経済的利益の20%(ただし,最低報酬金は10万円とします)

⇒経済的利益は,労災保険から支給される給付金をもとに計算します。

 

1-2.過労死・過労自殺

着手金

30~50万円

 

報酬金

経済的利益の20%(ただし,最低報酬金は10万円とします)

⇒経済的利益は,労災保険から支給される給付金をもとに計算します。

 

 

2.損害賠償請求

2-1.事故型労災

着手金

無料

 

報酬金

経済的利益が~300万円 経済的利益の20%
経済的利益が300万円~3000万円 経済的利益の15%+18万円
経済的利益が3000万円以上 経済的利益の9%+138万円

⇒経済的利益は会社から回収した金額をもとに計算します。

 

2-2.過労死・過労自殺

着手金

30~50万円

 

報酬金

経済的利益が~300万円 経済的利益の20%
経済的利益が300万円~3000万円 経済的利益の15%+18万円
経済的利益が3000万円以上 経済的利益の9%+138万円

⇒経済的利益は会社から回収した金額をもとに計算します。

※過労死・過労自殺事件で労災申請から損害賠償請求に移行する場合には,着手金の金額を調整させていただきます。

 

なお、その他の弁護士費用については、こちら(リンク)のページにて詳しくご説明させていただいておりますので、ご覧ください。

 

 

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