労災の様式5号の書き方と注意点を弁護士が解説します
1 労災の様式5号とは?
仕事をしている時に、労災事故にまきこまれてしまい、けがを負いました。
けがの治療のために、病院へ通院をしているのですが、労災事故の通院の費用はどうなるのでしょうか。
結論から先にいいますと、労災保険の療養補償給付の受給ができれば、労災保険から治療費が全額支給されますので、労働者は、治療費の負担をする必要がありません。
労災保険指定医療機関において、療養補償給付を受給するためには、労災保険の様式5号の文書を作成する必要があります。
今回は、労災保険の様式5号の書き方と注意点について、弁護士が分かりやすく解説します。
まず、労働者が労災事故にまきこまれて、けがをした場合、労災保険から、治療費の全額が支給されます。
この労災保険からの治療費の支給を、療養補償給付といいます。
療養補償給付として、具体的に支給されるものとしては、次のものがあげられます。
①治療費
②薬代
③手術費用
④自宅療養の場合の看護費
⑤入院中の看護費
⑥入通院のための交通費
このように、療養補償給付として、治療費が全額支給されますので、労災保険を利用することができれば、自己負担なく、安心して、治療に専念することができるのです。
この療養補償給付は、2種類あります。
療養の給付請求と療養の費用請求です。
療養の給付請求については、けがや病気をした時に、労災病院や労災保険指定医療機関で、無料で治療を受けることができます。
この療養の給付請求をする際に、作成するのが、労災の様式5号の文書です。
労災病院や労災保険指定医療機関で治療を受ける場合に、医療機関に対して、労災の様式5号の文書を提出することで、自身で医療費を支払うことなく、治療を受けることができるのです。
労災保険指定医療機関については、こちらの厚生労働省のサイトから検索できます。
https://rousai-kensaku.mhlw.go.jp/
他方、療養の費用請求については、労災病院や労災保険指定医療機関以外の医療機関において、治療を受けた場合、いったん労働者が治療費全額を支払った上で、労災保険から、労働者の預金口座に、労働者が支払った治療費全額が支給されます。
この療養の費用請求をする際に、作成するのが、労災の様式7号の文書です。
療養の費用請求の場合、医療機関に対して、労災の様式7号の文書を提出して、いったんは自身で治療費全額を立替払いしなければなりません。
この療養補償給付は、症状固定の時期まで、受給することができます。
仕事中にけがを負い、治療を続けたとしても、現代の医学では、これ以上、症状がよくならない時がきますが、この時点を症状固定といいます。
症状固定の時点で、労災保険による治療は打ち切られ、後遺障害が残る場合には、労災保険の障害補償給付の申請をし、後遺障害と認定されれば、労災保険から後遺障害の等級に応じた、補償を受けることができます。
また、療養補償給付は、療養に要する費用の支出が具体的に確定した日の翌日から、2年が経過すると、消滅時効が完成して、請求できなくなります。
そのため、時効によって、権利が失われないように、労災事故に巻き込まれて、治療が必要な場合は、なるべく早く、労災申請をするべきなのです。
もう一つ、労災の様式5号と同じく、労災病院や労災保険指定医療機関で治療した際に使用する様式として、労災の様式16号の3の文書があります。
労災の様式5号の文書は、仕事中に労災事故にまきこまれた際に使用しますが、労災の様式16号の3の文書は、通勤の途中に事故にまきこまれた際に使用します。
仕事中の労災事故と通勤の途中の事故とでは、使用する労災の様式が異なりますので、気を付けてください。
2 労災の様式5号の文書の入手方法
労災の様式5号の文書は、厚生労働省のホームページから入手することができます。
こちらの厚生労働省のホームページから、主要な労災保険の様式の文書を入手することができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousaihoken.html
また、労働基準監督署へ行けば、主要な労災保険の様式の文書を入手できますし、労災申請についての説明を聞くこともできます。
3 労災の様式5号の文書の作成方法と提出
ここでは、労働者が自ら、労災の様式5号の文書を作成する方法について、解説します。
まずは、労働者の氏名、住所、生年月日、職種等の個人情報や労災事故の年月日を記載します。
労働保険番号については、労働者はわかりませんので、空欄で提出しても大丈夫です。
労災保険指定病院や傷病の部位及び状態については、通院している病院に記載してもらいます。
事業主の証明の箇所については、会社に、証明をお願いして、拒否されたならば、空欄のまま提出しても、労働基準監督署は、受理してくれます。
労災の様式5号の文書に必要事項を記載したならば、通院している、労災保険指定医療機関に、労災の様式5号の文書を提出します。
労災保険指定医療機関に、労災の様式5号の文書を提出すれば、無料で治療を受けることができます。
4 労災の様式5号の文書を作成する際の注意点
労災の様式5号の文書の中で、「災害の原因及び発生状況」の箇所については、労災事故の状況を正確に詳細に記載することが重要になります。
「災害の原因及び発生状況」の箇所に、不正確な情報が記載されますと、労災事故とけがとの因果関係が認められなくて、労災と認定されないリスクがありますし、会社に対する損害賠償請求の際に、過失相殺されてしまい、認められる損害賠償の金額が減額されるリスクもあります。
そのため、「災害の原因及び発生状況」の箇所は、ご自身で記載することをおすすめします。
「災害の原因及び発生状況」の箇所は、書くスペースが狭いので、労災の様式5号の文書には、「別紙のとおり」と記載して、別紙に、労災事故の詳細な内容を記載することもあります。
できれば、弁護士に法律相談をして、労災事故の状況を弁護士に説明して、「災害の原因及び発生状況」の箇所を正確に記載するためのアドバイスをもらうことをおすすめします。
仮に、会社に労災の様式5号の文書を作成してもらった場合、「災害の原因及び発生状況」の箇所を、必ず、自分でチェックして、記載内容に誤りがないかを確認してください。
会社が記載した、労災の様式5号の文書に誤りがあれば、必ず訂正をしてください。
5 会社が労災の様式5号の文書の作成を拒否してきた時の対処法
会社に、労災の様式5号の文書の作成を依頼しても、会社が、労災保険を使わせたくないと考えて、文書の作成を拒否してくることがあります。
なぜならば、労災事故が発生したことが、労働基準監督署に発覚すれば、会社は、労働基準監督署から、行政指導や刑事告発をされるリスクがありますので、これを避けたいと考えることがあるからです。
また、労災事故の発生によって、会社が負担する労災保険料が増額される可能性もあります。
このような理由から、会社は、労災隠しをしてくることがあるのです。
しかし、労働者が労災申請をしなかった場合、労災保険からの補償を受けることができない上に、労働基準監督署の労災事故の調査がされないために、どのような労災事故が発生したのかがわからなくなり、会社に対して、損害賠償請求ができなくなるリスクがあります。
このように、労災隠しをされてしまうと、労働者のデメリットは極めて大きいです。
会社は、労災事故が発生した場合には、遅滞なく労働基準監督署に報告する義務を負っています。
会社がこの報告義務を怠ると、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
すなわち、労災隠しは、犯罪なのです。
会社が労災の様式5号の文書の作成を拒否してきた場合、労災の様式5号の文書の会社の証明の箇所を空欄にしたまま、労働基準監督署に提出し、会社が労災の様式5号の文書の作成を拒否していることの事情を説明すれば、労働基準監督署は、受理してくれますので、問題なく、労災の申請をすることができます。
会社からの労災隠しの圧力に屈することなく、権利として認められている、労災申請をしてください。
以上のとおり、労災の様式5号の文書を、労災保険指定医療機関に提出すれば、無料で治療を受けることができ、労働者にとって、とてもメリットが大きいので、労災事故に巻き込まれた場合、必ず、労災申請をするようにしてください。
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