労災の様式8号について弁護士が解説!記入例や手続の流れを紹介

 

 仕事中に機械の操作をしている時に、肘から下の部分の腕を切断してしまいました。

 

 長期間の入院を余儀なくされてしまい、会社を休業することになりました。

 

 治療のために、会社を休業している期間、給料が支払われないため、今後の生活が不安です。

 

 休業期間中、給料の補償はないのでしょうか。

 

 結論から先に言いますと、労災保険の休業補償給付を受給できれば、労災保険から、給料の約80%の補償金が支給されますので、安心して治療に専念することができます。

 

 労災保険の休業補償給付を受給するためには、労災の様式8号の文書を作成する必要があります。

 

 今回は、労災の様式8号の書き方や注意点について、弁護士がわかりやすく解説します。

 

1 労災の様式8号とは?

 

 まず、労働者が仕事中に労災事故にまきこれまて、けがをして、治療のために、会社を休業している場合、労災保険から、給料の約80%に相当する、休業補償給付を受給することができます。

 

 この労災保険の休業補償給付を受給するために、労災申請で使用する文書が、労災の様式8号です。

 

 正式名称は、「休業補償給付請求書」といいます。

 

 休業補償給付は、治療を受けている労働者が、休業しなければならない状態である場合に、休業開始4日目から支給を受けることができます。

 

 休業初日から通算して3日間は、休業補償給付が支給されません。

 

 この3日間を待機期間といいます。

 

 待機期間が終了した、休業4日目に、次の3つの要件を全て満たしている場合に、休業補償給付が支給されます。

 

 ①労災事故によって治療を受けていること

 

 ②当該傷病によって労働することができないこと

 

 ③賃金を受けていないこと

 

 この3つの要件を全て満たすならば、労災事故にまきこまれてしまい、治療のために休業している場合には、必ず、休業補償給付の申請をしてください。

 

 労災保険から、給料の約80%が支給されますので、安心して、治療に専念することができるのです。

 

 労災の休業補償給付については、こちらの記事もご参照ください。

 

  「労災の休業補償のポイントと注意点【弁護士が解説】」

労災保険の消滅時効に注意

 

 休業補償給付は、休業のために賃金を受け取っていない日ごとに消滅時効が進行し、2年を経過することで、消滅時効が完成します。

 

 休業補償給付を請求する権利が、時効で消滅すると、休業補償給付を受給できなくなります。

 

 また、一旦、ある休業期間について、休業補償給付の支給決定を受けていても、その期間以降の休業については、休業補償給付の請求を行わずに、2年の消滅時効の期間が経過した場合、請求を行わなかった期間の休業補償給付を受給できなくなります。

 

 そのため、ある程度の休業期間ごとに、毎回、休業補償給付の請求をする必要があります。

 

 消滅時効によって、休業補償給付の権利が失われないように、労災事故にまきこまれたならば、なるべく早く、労災申請をしてください。

 

労災の様式16号の6との違い

 

 もう一つ、労災の様式8号と同じく、治療のために休業している際に使用する様式として、労災の様式16号の6の文書があります。

 

 労災の様式8号の文書は、仕事中に労災事故にまきこまれた際に使用しますが、労災の様式16号の6の文書は、通勤の途中に事故にまきこまれた際に使用します。

 

 仕事中の労災事故と通勤の途中の事故とでは、使用する労災の様式が異なりますので、気を付けてください。

 

2 労災の様式8号の入手方法

 

 労災の様式8号の文書は、厚生労働省のホームページから入手することができます。

 

 こちらの厚生労働省のホームページから、主要な労災保険の様式の文書を入手することができます。

 

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousaihoken.html

 

 

 また、労働基準監督署へ行けば、主要な労災保険の様式の文書を入手できますし、労災申請についての説明を聞くこともできます。

3 労災の様式8号の文書の作成方法

 ここでは、労働者が自ら、労災の様式8号の文書を作成する方法について、解説します。

 

氏名・住所・生年月日

 

 まずは、労働者の氏名、住所、生年月日といった個人情報や労災事故の年月日を記載します。

 

労働保険番号

 

 労働保険番号については、労働者はわかりませんので、空欄で提出しても大丈夫です。

 

療養のため労働ができなかった期間

 

 療養のため労働できなかった期間については、申請書を提出するまでに、会社を休業していた期間を記載します。

 

振込先の預金口座の情報

 

 休業補償給付が振り込まれる先の、ご自身の金融機関の預金口座の情報を記載します。

 

事業主の証明

 

 
 事業主の証明の箇所については、会社に、証明をお願いして、拒否されたならば、空欄のまま提出しても、労働基準監督署は、受理してくれます。

 

療養担当者の証明

 

 通院している病院へ、労災の様式8号を持っていき、「診療担当者の証明」の箇所を記載してもらいます。

 

職種・負傷又は発病の時刻・所定労働時間

 

 労災の様式8号の裏面には、労働者の職種、負傷又は発病の時刻、所定労働時間(何時から何時までの勤務なのか)を記載します。

 

平均賃金

 

 また、労災の様式8号の裏面には、平均賃金を記載する欄と、別紙の平均賃金算定内訳があります。

 

 平均賃金は、労働災害が発生した日の直前の賃金締日からさかのぼった3ヶ月間の賃金の総額を、3ヶ月間の暦日数によって割ることで算出されます。

 

 例えば、12月に労災事故にまきこまれた場合、11月の賃金が30万円、10月の賃金が32万円、9月の賃金が28万円として、平均賃金は、(30万+32万+28万)÷(30+31+30)=9,890.1円となります。

 

 もっとも、この平均賃金ですが、実際に正確に計算しようとするとややこしく、また、お手元に、給料明細書がないこともあります。

 

 そのため、平均賃金の欄や別紙平均賃金算定内訳を空欄のまま、労働基準監督署へ提出しても、労働基準監督署は受け付けてくれますし、労働基準監督署が、正確に、平均賃金を計算してくれます。

 

労災の様式8号の提出先

 

 通院している病院から、証明をもらい、上記の必要事項を記載して、労災の様式8号が完成したならば、労災の様式8号を、ご自身が勤務していた会社の所在地を管轄する、労働基準監督署へ提出します。

 

 労災の様式8号を労働基準監督署へ提出後、労働基準監督署が調査を行い、支給決定がでましたら、指定したご自身の預金口座に、休業補償給付が振り込まれます。

 

4 労災の様式8号の文書を作成する際の注意点

 

 労災の様式8号の文書の中で、裏面の「災害の原因及び発生状況」の箇所については、労災事故の状況を正確に詳細に記載することが重要になります。

 

 「災害の原因及び発生状況」の箇所に、不正確な情報が記載されますと、労災事故とけがとの因果関係が認められなくて、労災と認定されないリスクがありますし、会社に対する損害賠償請求の際に、過失相殺の根拠とされてしまい、認められる損害賠償の金額が減額されるリスクもあります。

 

 そのため、「災害の原因及び発生状況」の箇所は、ご自身で記載することをおすすめします。

 

 「災害の原因及び発生状況」の箇所は、書くスペースが狭いので、労災の様式8号の文書には、「別紙のとおり」と記載して、別紙に、労災事故の詳細な内容を記載することもあります。

 

 できれば、弁護士に法律相談をして、労災事故の状況を弁護士に説明して、「災害の原因及び発生状況」の箇所を正確に記載するためのアドバイスをもらうことをおすすめします。

 

 会社に労災の様式8号の文書を作成してもらった場合には、「災害の原因及び発生状況」の箇所を、必ず、自分でチェックして、記載内容に誤りがないかを確認してください。

 

 会社が記載した、労災の様式8号の文書に誤りがあれば、必ず訂正をしてから、労働基準監督署へ提出してください。

 

5 会社が労災の様式8号の文書の作成を拒否してきた時の対処法

会社が労災の様式8号の文書の作成を拒否してくる理由とは?

 会社に、労災の様式8号の文書の作成を依頼しても、会社が、労災保険を使わせたくないと考えて、文書の作成を拒否してくることがあります。

 

 その理由は、労災事故が発生したことが、労働基準監督署に発覚すれば、会社は、労働基準監督署から、行政指導や刑事告発をされるリスクがありますので、これを避けたいと考えることがあるからです。

 

 また、労災事故の発生によって、会社が負担する労災保険料が増額される可能性もあります

 

 このような理由から、会社が労働者に対して、労災保険を使用させず、労働基準監督署に労災事故の報告をしないことを、「労災隠し」といいます。

 

労災隠しは犯罪です!

 

 しかし、労働者が労災申請をしなかった場合、労災保険からの補償を受けることができない上に、労働基準監督署の労災事故の調査がされないために、どのような労災事故が発生したのかがわからなくなり、会社に対して、損害賠償請求ができなくなるリスクがあります。

 

 このように、労災隠しをされてしまうと、労働者のデメリットは極めて大きいです。

 

 会社は、労災事故が発生した場合には、遅滞なく労働基準監督署に報告する義務を負っています。

 

 会社がこの報告義務を怠ると、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

 

 すなわち、労災隠しは、犯罪なのです。

 

 会社が労災の様式8号の文書の作成を拒否してきた場合、労災の様式8号の文書の会社の証明の箇所を空欄にしたまま、労働基準監督署に提出し、会社が労災の様式8号の文書の作成を拒否していることの事情を説明すれば、労働基準監督署は、受理してくれますので、問題なく、労災の申請をすることができます。

 

 会社からの労災隠しの圧力に屈することなく、権利として認められている、労災申請を必ずしてください。

 

 

 以上のとおり、労災の様式8号の文書を、労働基準監督署に提出して、支給決定されれば、労災保険から給料の約80%が補償され、労働者にとって、とてもメリットが大きいので、労災事故に巻き込まれた場合、必ず、労災申請をするようにしてください。

 

 当事務所では、労災事故にまきこまれた労働者の方をサポートするために、労災申請のサポートをしております。

 

 当事務所では、給付を受け取る権利がある方に、一人でも多く、給付を受け取っていただき、みなさまの未来への不安解消と、前を向くきっかけづくりのお手伝いをさせていただきたいと考えております。

 

 当事務所では、初回相談を無料で承っており、メールやlineでのご相談の受付も行っております。

 

 私達の持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。

 

 労災事故にまきこまれて、これからどうすればいいのかお悩みの場合には、ぜひ、当事務所へご相談ください。

 

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まずは弁護士にご相談いただき、ご自身の状況や今後の動きについて一緒に考えていきましょう。

 

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