解体工事における労災事故の対処法【弁護士が解説】

1 解体工事における労災事故

 

 木造建物の解体工事をしていたところ、外壁が倒壊して、外壁の下敷きになり、けがを負いました。

 

 
 このように、解体工事をしていた時に、労災事故に巻き込まれてしまった場合、どうすればいいのでしょうか。

 

 結論から先に言いますと、労災申請をして、労災と認定された後に、会社に対する損害賠償請求を検討します。

 

 今回は、解体工事における労災事故に巻き込まれた時の対処法について、わかりやすく解説します。

 

 まずは、解体工事における労災事故の実態について解説します。

 

 老朽化した建築物の解体工事は、全国各地で行われており、建築物の解体工事における労災事故が相次いで発生しています。

 

 解体工事において、労災事故が発生している背景としては、ベテランの労働者が一線を退く一方、建設関係労働者の人手不足が顕在化し、現場の安全管理水準の低下や安全管理体制の脆弱化が大きく関与していることが挙げられます。

 

 解体工事の現場で発生しやすい労災事故としては、①高所からの転落や墜落、②外壁の倒壊、③重機との衝突が代表的です。

 

 ①高所からの転落や墜落としては、スレート屋根の踏み抜きによる墜落や、梁柱等の骨組みの上からの墜落等があります。

 

 
 解体工事では、足場の不安定さや、踏み抜きやすい素材の上での作業が危険を増しています。

 

 高所からの転落や墜落の労災事故の具体例として、スレート葺の屋根を取り壊す作業を行っていた時に、スレートを踏み抜き、約5メートル下のコンクリート床に墜落して、労働者が死亡したものがあります。

 

 ②外壁の倒壊の労災事故は、解体作業中に外壁が不安定になり、倒壊し、労働者が倒壊した外壁の下敷きになる形で発生します。

 

 外壁の倒壊の労災事故の具体例として、鉄筋コンクリートブロック造の平屋建て古民家を解体工事中、コンクリートブロック壁を引き倒すために、電動ハンマーではつり作業を行っていたところ、突如、コンクリートブロック壁が倒壊し、労働者が下敷きとなり、死亡したものがあります。

 

 ③重機との衝突の労災事故について、重機の操作ミスや、現場の視界不良が主な原因で、解体工事中に重機との衝突が発生します。

 

 重機との衝突の労災事故の具体例として、木造家屋の解体作業現場において、散水作業中の労働者が、解体用重機のカウンターウェイトと、解体中の家屋との間に挟まれてしまい、死亡したものがあります。

 

 このように、解体工事の現場では、死亡や重篤な後遺障害が残る労災事故が発生しやすいといえます。

 

2 労災申請をする

 

 解体工事における労災事故にまきこまれた場合には、必ず、労災申請をしてください。

 

 解体工事における労災事故が、労災と認定されれば、労災保険から、治療費が全額支給されます。

 

 すなわち、無料で、労災事故によるけがの治療ができるのです。

 

 また、治療のために、会社を休業している期間、労災保険から、給料の約8割分の休業補償給付が支給されます。

 

 この休業補償給付は、労災事故の治療のために、会社を休業していて、会社から給料の支給がない期間、支給されます。

 

 そのため、安心して治療に専念できます。

 

 そして、労災事故によるケガの治療を続けていたものの、これ以上、現在の医学では、症状が改善されない時がきます。

 

 これを、症状固定といいます。

 

 症状固定時点で、残ってしまった悪しき症状で、労働能力の喪失を伴うものを、後遺障害といいます。

 

 労災保険では、1級から7級までの後遺障害の認定がされた場合には、年金が支給され、8級から14級までの後遺障害の認定がされた場合には、一時金が支給されます。

 

 後遺障害が残った場合、労災保険から、年金または一時金が支給されることで、後遺障害によって、労働能力が失われたことによる収入の減少に対する補償がなされ、今後の生活が安定します。

 

 他方、解体工事による労災事故が発生して、不幸にも、死に至った場合、ご遺族は、労災保険の遺族補償給付を受給できます。

 

 遺族補償給付を受給できれば、2ヶ月に1回、労災保険から、年金が支給されますので、残されたご遺族の生活の安定につながります。

 

 このように、解体工事による労災事故にまきこまれた場合、今後の生活の安定のために、必ず、労災申請をしてください。

 

 労災申請をするには、①会社に手続を代行してもらうか、②ご自身で労働基準監督署へ行って手続をする、③弁護士に労災申請を依頼する、の3つの方法があります。

 

 労災の申請書に、労災事故の発生状況を正確に記載する必要があること、適切な後遺障害の認定を受ける必要があることから、労災申請の手続を、弁護士に依頼することをおすすめします。

 

3 会社に対する損害賠償請求を検討する

 

 労災保険からは、労災事故によって被った精神的苦痛に対する慰謝料は、支給されません。

 

 また、後遺障害による収入の減少に対応する、労災保険の障害補償給付と、労働者の死亡による収入の喪失に対応する、労災保険の遺族補償給付では、労働者の将来の収入の減少・喪失という損害が、全てまかなわれるわけではありません。

 

 このように、労災保険からは支給されない慰謝料や、労災保険からの補償では足りない、労働者の将来の収入の減少・喪失の損害について、会社に対して、損害賠償請求ができないかを検討します。

 

 すなわち、解体工事における労災事故について、会社が安全対策を怠っていた場合、会社に対して、損害賠償請求ができる可能性があります。

 

 労災事故で、会社に対して、損害賠償請求をするためには、会社に、安全配慮義務違反が認められなければなりません。

 

 安全配慮義務とは、労働者の生命・健康を危険から保護するように、会社が配慮する義務をいいます。

 

 では、どのような場合に、会社に安全配慮義務違反が認められるのでしょうか。

 

 それは、会社が、労働安全衛生法令やガイドラインに違反していた場合、安全配慮義務違反が認められます。

 

 例えば、高所からの転落や墜落の労災事故の場合、会社は、高さが2メートル以上の箇所で、労働者に作業をさせる場合、足場を組み立てる等の方法により作業床を設置するか、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具(いわゆる安全帯)を使用させなければなりません(労働安全衛生規則518条)。

 

 また、会社は、スレートでふかれた屋根の上で、労働者に作業をさせる場合、幅が30cm以上の歩み板を設け、防網を貼る等踏み抜きによる危険の防止の措置をとらなければなりません(労働安全衛生規則524条)。

 

 外壁の倒壊の場合、解体対象物に倒壊の危険性がある時には、倒壊防止のための控えスペースの設置や立入禁止区域を定め、労働者の立ち入りを禁止することで、労災事故を防止することができます。

 

 重機との衝突の場合、重機の作業半径内に労働者を立ち入らせないように、バリケードやロープの設置等立入禁止の措置を講じたり、作業の必要上やむを得ず、立ち入らせる場合には、誘導者を配置し、その者の誘導によって、作業をさせることで、労災事故を防止することができます。

 

 このように、会社が労災事故を防止するための安全対策を怠っていた場合、労働者は、会社に対して、労災保険からの補償では足りない損害について、損害賠償請求をすることができるのです。

 

 会社に対する損害賠償請求が認められ、適切な損害賠償金が支払われることで、今後の生活の安全が確保されることにつながります。

 

 労災事故の損害賠償請求では、会社に安全配慮義務違反が認められるかや、労働者側の落ち度によって、損害賠償請求の金額が減額される過失相殺が認められるか等について、検討する必要がありますので、弁護士に法律相談をすることをおすすめします。

 

 ここまで、解体工事における労働災害について解説してまいりました。

 

 もし、労災事故に巻き込まれた場合には、労災申請をしていただきたいのですが、わからない場合は弁護士にご相談ください。

 

 当事務所では、給付を受け取る権利がある方に、一人でも多く、給付を受け取っていただき、みなさまの未来への不安解消と、前を向くきっかけづくりのお手伝いをさせていただきたいと考えております。

 

 当事務所では、初回相談を無料で承っており、メールやLINEでのご相談の受付も行っております。

 

 私達の持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。

 

 労災事故にまきこまれて、これからどうすればいいのかお悩みの場合には、ぜひ、当事務所へご相談ください。

弁護士による労働災害の相談実施中!

弁護士法人金沢合同法律事務所では、初回相談無料となっております。

 

まずは弁護士にご相談いただき、ご自身の状況や今後の動きについて一緒に考えていきましょう。

 

労働災害に強い弁護士が、あなたの抱えている不安を解消し、明るい未来を切り拓きます。

 

ご相談の流れはこちら>>>

 

弁護士に依頼する3つのメリット>>>

 

弁護士費用はこちら>>>