労災による長期間の休業により解雇されてしまう?【弁護士が解説】
Q.仕事中にケガをしてしまい、現在、会社を長期間休んで治療をしていますが、長期間休んでいると、会社から戦力外として、解雇されてしまうのでしょうか。
A.労働者が、仕事中に負傷して、治療のために休業している期間と休業後30日間について、会社は、労働者を解雇することはできませんので、安心して治療に専念してください。
労働基準法19条は、使用者は、労働者が業務上負傷し、療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない、と規定されています。
労働者が働くことができないとき、または十分に働くことができないときに解雇されると、労働者の生活は大変困難になります。
そこで、労働者が業務上のケガや病気のために労働能力を失っている期間及び労働能力の回復に必要なその後の30日間について、会社の解雇を制限して、労働者の生活を安定させようとしたのです。
労働基準法19条の解雇制限が適用されるのは、労働者が業務上負傷して、療養のために休業する期間及びその後30日間です。
そのため、労働者が、仕事中のケガではなく、プライベートな活動中にケガをして休業している期間については、労働基準法19条の解雇制限は適用されません。
会社を休業しているものの、ケガの治療をしていなかった場合や、ケガの治療はしているものの、休業しないで出勤している場合には、労働基準法19条の解雇制限は適用されません。
仕事中に負傷してしまい、治療を続けたものの、これ以上治療をしても症状が変わらない状況となり(症状固定といいます)、後遺障害の認定を受けて、その後も休業しながら、治療をしている場合、症状固定以降は、労働基準法19条の解雇制限は適用されません。
また、労働基準法19条で制限されているのは解雇であり、労働者が自己都合退職する場合や、労働契約の期間の満了による退職、定年退職の場合には、労働基準法19条は適用されません。
もっとも、仕事が原因でうつ病を発症して休職し、うつ病の治療に長期間かかり、休職期間が満了してしまい、休職期間満了によって退職扱いとされた場合には、労働基準法19条の趣旨に照らして、休職期間満了による退職扱いが無効とされた裁判例があります(エターナルキャストほか事件・東京地裁平成29年3月13日判決・労働判例1189号129頁)。
さらに、仕事中のケガや病気による休業期間及びその後30日間の期間中であっても、会社が労働者に対して、労働基準法81条の打切補償を支払った場合には、会社は、労働者を解雇することができます。
打切補償とは、仕事中のケガや病気のために、労働基準法75条の療養補償を受けている労働者が療養開始後3年を経過してもケガや病気が治らない場合に、平均賃金の1200日分を支払って、以後の補償を打ち切るものです。
会社は、療養開始後3年を経過しても打切補償を行わない限り、解雇することはできません。
また、労災保険法19条により、療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合や、療養の開始後3年を経過した日以後において傷病補償年金を受けることとなった場合には、打切補償を支払ったものとみなされて、会社は解雇することができます。
このように、労働基準法19条の解雇制限は、状況によっては適用されないことがありますので、仕事中のケガが原因で治療のために長期間休業していて、解雇される不安がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士による労働災害の相談実施中!
弁護士法人金沢合同法律事務所では、初回相談無料となっております。
まずは弁護士にご相談いただき、ご自身の状況や今後の動きについて一緒に考えていきましょう。
労働災害に強い弁護士が、あなたの抱えている不安を解消し、明るい未来を切り拓きます。
- 労災申請を労働者本人が行うデメリットとは?【弁護士が解説】
- 労災の病院変更が認められる理由とは?労災治療の転院について弁護士が解説します
- 労災の様式8号について弁護士が解説!記入例や手続の流れを紹介
- 解体工事における労災事故の対処法【弁護士が解説】
- 労災の様式5号の書き方と注意点を弁護士が解説します
- 労災で後遺障害10級と認定された時、もらえる金額はいくら?【弁護士が解説】
- 最大1300万円の受給可能性がある建設アスベスト給付金を弁護士が解説
- 労災で後遺障害12級と認定された時、もらえる金額はいくら?【弁護士が解説】
- 労災で後遺障害14級と認定された時、もらえる金額はいくら?【弁護士が解説】
- 労災事故による入院費用は自己負担なのか?【弁護士が解説】