取締役には労災保険が適用されないのか
Q 取締役が仕事中にけがをした場合、労災保険を利用できないのでしょうか?
A 原則として、取締役は、労災保険を利用できませんが、例外的に、肩書が取締役であっても、労働者に該当すれば、労災保険を利用できます。
労災保険は、労働者でないと利用できませんので、取締役は、経営者であって、労働者ではないので、原則として、労災保険を利用できません。
もっとも、取締役であっても、単に代表取締役の指揮命令のもとで働いているに過ぎない場合には、労働者に該当して、例外的に労災保険を利用できることがあります。
取締役が労働者といえるかについては、次の事情を総合考慮して判断されます。
1つ目は、取締役就任の経緯です。
従業員から取締役に選任された場合であれば、取締役に就任したときに、従業員としての退職の手続があったかを検討します。
例えば、退職金が支給されたか、退職届が提出されたか、雇用保険からぬけたかを検討します。
これらの手続がされていたら、労働者ではない方向に評価されます。
また、会社における従来の立場・関係の変更の有無を検討します。
従業員のときと何も変化がないなら、労働者であるという方向に評価されます。
2つ目は、取締役としての権限・業務執行です。
これについては、次の5つの事情を検討します。
①業務執行権限の有無・内容
会社の定款で、会社の業務について、執行する権限が与えられていたならば、労働者ではないという方向に評価されます。
②取締役としての業務遂行の有無・内容
取締役会に出席して、会社経営に直接関与している場合には、労働者ではないという方向に評価されます。
③代表取締役からの指揮監督の有無・内容
代表取締役の指揮監督のもとで仕事をしていたならば、労働者であるという方向に評価されます。
④拘束性の有無・内容
勤務時間や勤務場所の管理や拘束がある場合には、労働者であるという方向に評価されます。
⑤提供する労務の内容
他の従業員と同じ仕事をしていた場合には、労働者であるという方向に評価されます。
3つ目は、報酬の性質・内容です。
これについては、次の3つの事情を考慮します。
①会計上、賃金か役員報酬のどちらで処理されているか
賃金として処理されていれば、労働者であるという方向で評価されます。
役員報酬として処理されていれば、労働者ではないという方向で評価されます。
②一般従業員との異同
一般従業員と比較して、報酬が高額であれば、労働者ではないという方向で評価されます。
③従業員から取締役に就任したときに、支給額の増額があったか
支給額に増額があれば、労働者ではないという方向で評価されます。
以上の事情を総合考慮して、労働者といえれば、取締役であっても、労災保険を利用することができます。
取締役であっても、単に代表取締役の指揮命令のもとで働いている労働者であれば、労災保険を利用できますので、取締役の労災保険の利用について、弁護士に相談することをおすすめします。
なお、取締役は、労災保険の特別加入制度を利用することができますので、けがをするリスクのある仕事をしている場合には、労災保険に特別加入することをおすすめします。
弁護士による労働災害の相談実施中!
弁護士法人金沢合同法律事務所では、初回相談無料となっております。
まずは弁護士にご相談いただき、ご自身の状況や今後の動きについて一緒に考えていきましょう。
労働災害に強い弁護士が、あなたの抱えている不安を解消し、明るい未来を切り拓きます。
- 労災の手続きの流れを弁護士が完全解説!
- 労災申請を労働者本人が行うデメリットとは?【弁護士が解説】
- 労災の病院変更が認められる理由とは?労災治療の転院について弁護士が解説します
- 労災の様式8号について弁護士が解説!記入例や手続の流れを紹介
- 解体工事における労災事故の対処法【弁護士が解説】
- 労災の様式5号の書き方と注意点を弁護士が解説します
- 労災で後遺障害10級と認定された時、もらえる金額はいくら?【弁護士が解説】
- 最大1300万円の受給可能性がある建設アスベスト給付金を弁護士が解説
- 労災で後遺障害12級と認定された時、もらえる金額はいくら?【弁護士が解説】
- 労災で後遺障害14級と認定された時、もらえる金額はいくら?【弁護士が解説】