労災事故における会社に対する損害賠償請求の消滅時効

Q.労災事故にあったので、会社に対して、損害賠償請求をしたいのですが、いつまでに請求しなければならないのでしょうか。

A.2020年4月1日以降に、会社との間で労働契約を締結して、労災事故にあったのであれば、消滅時効は5年となります。

労災事故によって、被災労働者が会社に対して損害賠償請求ができる場合であっても、長期間、請求しないままにしておくと、損害賠償請求権が時効によって消滅することがあります。

 

まずは、消滅時効の起算点を説明します。

 

労災事故によって、被災労働者が死亡した場合には、原則として、被災労働者が死亡した日の翌日から、消滅時効が進行します。

 

労災事故によって、被災労働者がけがを負った場合、治療をしても、これ以上は良くならない状態となる症状固定時がおとずれるので、原則として、被災労働者の症状が固定した日から、消滅時効が進行します。

 

次に、消滅時効の期間について説明します。

 

2020年4月1日から、改正民法が施行されました。

 

労災事故が2020年4月1日よりも前に発生した場合には、改正前の民法が適用される可能性があります。

 

改正前の民法では、会社に対する損害賠償請求の法律構成によって、消滅時効の期間が変わります。

 

不法行為を根拠に損害賠償請求をする場合には、消滅時効の期間は、損害及び加害者を知ってから3年となります。

 

会社の安全配慮義務違反の債務不履行責任を根拠に損害賠償請求をする場合には、消滅時効の期間は、結果が発生してから10年となります。

 

そのため、改正前の民法では、不法行為を根拠とする損害賠償請求では、3年の消滅時効にかかっても、安全配慮義務違反の債務不履行責任を根拠とする損害賠償請求では、10年の消滅時効にかかっていない場合には、会社に対する損害賠償請求が可能でした。

 

2020年4月1日に施行された改正民法では、労災事故による損害賠償請求の消滅時効は、法律構成にかかわらず、5年の消滅時効に統一されました。

 

そのため、2020年4月1日以降に労働契約を締結して、労災事故にあったならば、死亡の場合には、被災労働者が死亡した日の翌日から5年、けがをした場合には、被災労働者の症状が固定した日から5年で、消滅時効にかかることになります。

 

なお、被災労働者が労働基準監督署に対して、労災申請をしても、会社に対する損害賠償請求の消滅時効の完成を猶予することにはなりませんので、注意が必要です。

 

治療期間が長期化したり、労災申請した後の結果がでるのが遅かったり、労災の不支給決定に対する審査請求をしたりしていると、会社に対する損害賠償請求が消滅時効にかかるリスクがあります。

 

会社に対する損害賠償請求が消滅時効にかからないようにするためにも、早目に弁護士に相談することをおすすめします。