熱中症の労災
Q 働いているときに熱中症になった場合、どのような補償を受けることができるのでしょうか?
A 熱中症が労災と認定されれば、労災保険から、治療費が全額支給され、治療のために会社を休んだとしても、給料の約8割が支給されます。
1 熱中症とは
熱中症とは、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節などの体内の重要な調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称をいいます。
熱中症の症状としては、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温等があげられます。
2 職場における熱中症の発生状況
厚生労働省が公表している「令和2年職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」という資料によりますと、2011年から2020年までの過去10年間で、職場における熱中症による死亡者数は、毎年約20人となっております。
職場における熱中症が発生しやすい業種としては、建設業と製造業があげられます。
熱中症を生じやすい職場の特徴としては、炎天下の屋外作業や屋内作業でも炉や発熱体があることなどから、一般の環境よりも高温多湿の場所が多くみられ、労働安全衛生保護具の着用により体熱が放散しにくい状況になっていることなどがあげられます。
3 熱中症の労災認定基準
仕事中に熱中症を発症したとして労災認定されるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
①熱中症を発症したと認められること(医学的診断要件)
熱中症を発症したと認められるためには、作業環境や気温等のデータに加えて、他の疾病ではなく熱中症を発症していることが外見や体温などからも診断できることが必要でして、次のabcによって判断します。
a 作業条件及び温湿度条件等の把握
b 一般症状の視診(痙攣・意識障害等)及び体温の測定
c 作業中に発生した頭蓋内出血、脳貧血、てんかん等による意識障害等との鑑別診断
②熱中症の発症が業務に起因すること(一般的認定要件)
次のabcを総合判断して認定します。
a 業務上の突発的またはその発生状態を時間的、場所的に明確にしうる原因が存在すること
b 当該原因の性質、強度、これらが身体に作用した部位、災害発生後発病までの時間的間隔等から災害と疾病との間に因果関係が認められること
c 業務に起因しない他の原因により発病したものではないこと
具体的にどれくらいの温度・湿度や作業強度だと、熱中症になる危険が大きくなるかといいますと、WBGT値という暑さ指数が基準値を超える状況であれば、熱中症を発症する危険が大きくなり、労災認定の可能性が高くなります。
4 労災保険を利用するメリット
熱中症の治療のために治療費がかかったとしても、労災保険から、治療費が全額支給されますので、労働者の治療費の負担はゼロになります。
また、治療のために会社を休んだとしても、労災保険から、休業補償給付として、給料の約8割が支給されます。
そのため、労働者は、労災保険を利用することで、安心して治療に専念することができるのです。
5 会社が労災保険を利用させてくれないときの対処法
仕事中に熱中症になったので、会社に労災申請をお願いしても、会社から、労災にはしないでほしいと言われることがあります。
しかし、会社は、労働者が労災保険の手続きを行うことができるように助力しなければならず、労災保険を受けるために必要な証明をしなければならない義務を負っています。
また、会社は、労災事故が発生した場合、労働基準監督署に報告義務を負っており、この報告義務を怠ると、50万円以下の罰金に処せられるのです。
このように、会社が「労災隠し」をすることは犯罪ですので、会社から労災にしないでほしいと言われても、臆することなく、労災の申請をするようにしてください。
会社が労災申請に協力してくれなくても、そのことを労働基準監督署に説明すれば、労働基準監督署は受付をしてくれますので、ご自身で労災申請をするようにしてください。
熱中症の労災についてお悩みの場合には、弁護士へご相談ください。
弁護士は、熱中症の労災や会社の労災隠しについて、適切なアドバイスをしてくれます。
You Tubeでも「熱中症の労災」について解説していますので、ぜひご覧ください。
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